トヨタの高級セダンのSAIの最新情報を本記事では紹介します。
SAIは、ボディサイズが大型化する傾向にある国内のセダン市場で、プログレの意志を継ぐ「小さな高級車」という貴重な存在として存在してきました。
そんなSAIと今後の小さな高級セダンに対する内容を今回記事にしました。
トヨタ SAI 最新情報!2017年販売終了でカムリと実質統合へ
2017年11月15日、SAIはフルモデルチェンジをすることなく販売終了となりました。
また、SAIの姉妹車種だったレクサスHSについても2018年3月9日に販売終了しています。
SAI 実質後継車は新型カムリハイブリッド
日本仕様のカムリは、2017年7月にフルモデルチェンジを実施して先代同様にハイブリッド専用セダンとしてデビュー。
この新型カムリハイブリッドが事実上のSAIの後継車と言える存在になります。
トヨタ SAIの復活は難しいと推測できる理由
カムリに統合されたとは言え、小型の高級セダンを求めるユーザーにとっては、SAIの復活を望みたい所。
しかしながら、SAIの復活は難しいと推測できます。
その理由は、トヨタが2020年代半ばをめどに国内にて販売する車種を現行の半分となる30程度に減らす検討に入ったとされているからです。
これは日経新聞が報じています。
この事から、需要の少ないSAIを復活させる可能性は考え難いのです。
今後、トヨタ車のミドルサイズセダンは、SAIとマークXをカムリへと集約させる可能性が有力となっています。
ここからは、そもそもSAIとはどのような魅力があったのか、もう一度振り返ってみましょう。
プログレの後継的存在として誕生したトヨタSAI
SAIは、2009年12月にデビューしたトヨタ初のハイブリッド専用セダン。
SAIについては、多くの部分が共通で設計され、同じ九州工場の同一ラインでの混流生産されている「レクサスHSのトヨタバージョン」というイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。
また前期モデルのデザインが3代目プリウスに酷似していることや車格がプリウスよりも上になることから「プリウスのお兄ちゃん」といった印象が強かったのも事実。
ただ、本来SAIの最も大きな売りというのは、「小さな高級車」という所です。
日本国内でのセダン不況を受け、各メーカーの多くのセダンは北米をターゲットとして開発していることもあり、年々多くのセダンがモデルチェンジごとに大型化しています。
国内中心に発売されているクラウンでさえも車幅は1,800mm、全長が4,900mm近くまで大型化。
国産のコンパクトセダンと言えば各メーカーのエントリーモデルが大半といった状況です。
そこで置き去りとなってしまっているのが、高品質のコンパクトセダンを求めるユーザーです。
「高級セダンがほしいが、道路がせまい地域が多い日本では、大きい車に乗るのは抵抗がある」
「これまで大型セダンに乗っていたけれども、年齢的にしんどいので小さい車に乗り換えたい。けれども安っぽい車には乗りたくない。」
このように思うセダン愛好ユーザーは少なくありません。
まさに、そのようなユーザー向けにトヨタが投入したのがSAIなのです。
国産メーカーでは、現在コンパクトな高級車というのはありそうで中々ありません。
なのでSAIは、かなり貴重な存在とも言えます。
(※現行SAIのボディサイズは、全長4,695mm、全幅 1,770mm、1,485mm)
実はこれまで同じように小さな高級セダンとしてトヨタのプログレという車が1998年から2007年まで発売されていました。
<トヨタ プログレ>
プレグレは、当時のコロナ(現在のプレミオ)並みの5ナンバーサイズにも関わらず、質感や搭載装備、静粛性はクラウン並みというまさに小さな高級車として孤高の存在として注目されました。
しかしながら、惜しくも一代限りで引退をし、一部のファンからは今もなお生産終了を惜しむ声がある程です。
けれども、このプログレの意志を引き継いだ車こそがSAIでした。
コンパクトなボディサイズながら質感の高いデザイン、充実した車内装備という部分、SAI開発担当のチーフエンジニアがプログレ製品企画部門の主担当員だったということもあり、SAIは実質的なプログレの後継車種となります。
<2代目プログレと言っても過言ではないSAI>
このSAIの発売は2009年ですから、プログレが生産終了してからわずか2年での新生プログレ誕生とも言えます。
ところが、発売後は、保守的なデザインの不評や小さな高級車という訴求が浸透しなかったこともあり、月間販売台数が500台前後になることもあり苦戦。
2013年に行われたビッグマイナーチェンジでは、これまで不評だったデザインをフルモデルチェンジ並みに刷新させ斬新で高級感を押し出したデザインにチェンジ。
さらにターゲットを若者にも広げ新たなユーザー獲得を狙うことにもチャレンジ。
<マイナーチェンジでデザインを刷新した後期型SAI>
私としては、個人的には最近のトヨタのデザインの中でMC後の新型SAIのデザインはかなり好みで、気に入っていました。
カムリやシエンタといった「いかにも最近のトヨタのデザイン!」という感じではなく、スタイリッシュで次世代感のあるカッコいいデザインだと思うのです。
特に特別仕様車のG”Viola(ヴィオラ)”についてはセクシーで「小さな高級車」感が良い感じで好きです。
<特別仕様車G”Viola(ヴィオラ)”>
実はSAIの起動音に関しては、S210クラウンと同じメロディが採用されていました。こういう所からも、トヨタの高級車という演出がされていることが伺えます。
ここから、今後はTNGA思想のプラットフォームや4代目プリウスに採用されている最新のハイブリッドシステム、トヨタセーフティセンス搭載の為のモデルチェンジをするということをSAIのファンであれば誰もが期待するはずですが、残念ながら生産終了となりました。
なぜSAIは成功できないのか?
プログレに続いて、SAIもモデルチェンジせずに一代限りでの生産終了となれば、小さな高級車が日本ではヒットが困難ということを示します。
なぜSAIが成功できなかったのかについては、個人的には以下のように思います。
- 小さな高級セダンをSAIの価格を出してまで欲しいと思うユーザーが少なかった
- カムリハイブリッドなど他のトヨタセダンの中で埋もれてしまった
ただえさえ、セダン市場自体が冷え切っている日本で、300~400万円前後の費用をかけてまで小さな高級セダンにこだわるユーザーがどれほどいるのかという所です。
そこまでの金額を支払うのであれば、レクサスのエントリーモデルに手が伸びる価格ですし、最新の装備が備わった新型プリウスの上級モデルが買えてしまいます。
また、トヨタのハイブリッドセダンとしては、世界戦略車のカムリハイブリッド、高級車の代名詞であるクラウンのハイブリッドモデルが存在し、またSAIのハイブリッドシステムはこれらのセダンよりも旧式のものが搭載されているという弱みもあります。
また、ややサイズはSAIよりも大きくなるものの、それなりの質感を備え、200万円代から販売されているマークXもあります。
そういった複数のトヨタの上級・高級セダンがある中、どうしても存在が隠れてしまうのは否めません。
正直、カムリハイブリッドがなければ、アンチクラウンユーザーや、マークXでは物足りないという層を一気に取り込むことができると思いますが、SAIの次期モデルでカムリに統合となれば、「小さな高級車」よりも「ゆったりとした大型の世界戦略車」の方が優先されるということになります。
これは海外で売れているカムリに集中するというグローバルの視点で見れば致し方がないことなのかもしれません。
もはや小さな高級セダンはアリオン・プレミオに託すしかない!?が、しかし・・・
プログレ、SAIが続いてヒットにつながらなかったことから、今後、小さな高級セダンとして希望の存在はアリオン・プレミオくらいかと。
プレミオに関しては元々、旧クラウンロイヤルを意識したようなデザインでしたが、2016年のビッグマイナーチェンジでアリオン・プレミオ共に現行クラウンアスリート・ロイヤルと良く似たデザインが与えられました。
<クラウンアスリート風の新型アリオン>
<クラウンロイヤル風の新型プレミオ>
アリオン・プレミオはカローラの上位車種という位置づけで高級車ではありませんが、ユーザー層は高齢者が多く、2016年の改良にてクラウンをより意識したデザインを採用したことから、トヨタとしては
- 定年等によりクラウンからコンパクトな車への乗り換えを考えている
- 高額な金額を出してまで高級セダンは欲しくないが、見栄えの車が欲しい
というユーザーを囲いこむ狙いがあるのは少なからずあると言えます。
SAIがヒットしなかったのは、「高いお金を出してSAIを買うならば、100万円代から販売されており、見栄えに関してそこそこ高級感のあるプレミオの方で充分じゃないか」という部分も少なからずあったのではないでしょうか。
SAIがカムリと統合となり、最後の砦はアリオン・プレミオしかありません。
次期アリオン・プレミオにはクラウンに近い静粛性や乗り心地を実現、そして自動ブレーキが歩行者検知に対応するトヨタセーフティセンスPといった上級モデルに採用されている安全装備を搭載という形にすれば、SAIの存在はなくとも、代わりにアリオン・プレミオが「小さい高級車」として君臨することができます。
プレミオに関しては実は、2016年10月の販売台数では2,007台となっており、エスティマの1,914台よりも多い状況なのです。
自販連が公表している2016年10月の普通車販売数ランキングでプレミオよりも一つ上のスバルのレヴォーグの販売台数さえ2,350台なので、プレミオがいかにセダンの中でも需要があるのかが分かります。
つまり、トヨタのセダンの中でも売れているプレミオを少し装備や質感だけを向上させ、今までよりも高級化させるのがベターなのではないかと思いませんか?
・・・がしかし!
そうは言ったものの、次期アリオン・プレミオはカローラと統合する可能性が出てきています。
これによって新生カローラは、現在のアリオン・プレミオクラスに上級シフトする見通しです。
ならば、セダンファンとして期待したいのは、せめてもの次期カローラに小さな高級セダンチックなラグジュアリーな上級グレードを設定という所です。
- カローラとアリオン、プレミオ統合⇒新生カローラ
- カムリ、マークX、SAI統合⇒次期カムリ
というのが現在濃厚な今後のトヨタのセダンに関するシナリオですが、そうなれば新生カローラにラグジュアリーエディションをラインナップしてもらうしか、小さな高級セダンの残された道はないですよね。
けれども、本音を言うと、
- 実質、次期プレミオに値する車種をFRのコンパクトセダンにして、マークXと統合。そして次期カローラと次期カムリの間に位置する「小さな高級車」として君臨
を是非とも実現してほしい!笑
あえてそれを次期SAIとしてもいいじゃないかと私は思います。
なんとかトヨタさんには期待したい所ですが、果たして・・・
高級コンパクトセダンの時代は幕を閉じるのか・・・
よくよく考えてみると、需要が少なく、冷え切ったセダン市場という現在の日本の状況の中で、SAIというラグジュアリーなコンパクトセダンが発売されていること自体、奇跡的なことだったのかもしれません。
SAIの発売は、資本力のあるトヨタだからこそでき、セダンファンを決して見捨てないといった思いも感じます。
けれども、今後はラインナップの大幅整理で、そうはいかないでしょう。
また、車を所有するというステータスは、昔に比べれば大幅に下がっており、ましてや自動運転技術が発達する状況の中で、ますますニッチな存在となる高級なコンパクトセダンという市場が潮時なのは否定できません。
ただ、私もそうですがセダン好きなユーザーが消えるわけではありません。そんな状況の中、SAIやプログレのような小さな高級セダンを求めるセダンファンにとって納得のいく代替車があらわれるのかどうか。
今後のセダン業界からは目が離せそうにありません。